2013年8月28日水曜日

本土企業の下請けになっていく沖縄の建設業者

電柱を埋めると変圧器を設置するのが大変だというが、あんなものを地上に出しているのは日本ぐらいで、そんな屁理屈で反対するのは、電柱を立てることに何らかの利権がからんでいるからではないかと思わざるを得ない。もっとも、ここまで電柱を立ててしまうと、沖縄から電柱を撤去するのはほぼ不可能だろう。沖縄の公共工事だが、沖縄振興開発事業費は年々減らされているとはいえ、小泉政権でも平均して年間二五〇〇億円ほどが投入された。地方交付税とは別に、毎年これだけの予算が組まれ、そのほとんどが土木建築に割かれている。

小泉改革以降、全国的に公共事業は減らされたが、沖縄にこれだけの公共工事があることは、本土の土建業界にしても非常に魅力的だということで、本土の大手企業が沖縄の公共事業に手を伸ばしはじめ、いたるところで沖縄の企業を差し置いて、工事を奪い取る事態が起こっているという。開発振興事業ではないが、最近、おもろまちにできた合同庁舎の工事でも地元企業が閉め出された。具体的にどんな方法をとったのかは知らないが、たとえば入札資格に、公共工事の完工高を國場組の額より上に設定すれば、県内の業者はほとんど参加できなくなる。しばらく下請け、孫請けで仕事をもらっていたが、数年前から、それじゃ食べていけないと、地元企業が民間マンションに力を入れはじめた。これがおもろまちを中心としたマンションブームにつながっていく。ある業者はこう言って嘆いた。

「公共工事なら二、三割の利益を確保できるが、民間の工事だと数%しか残らないから、どこも自転車操業で大変です。おもろまちのタワーマンションなど、本土企業が主導だから、さらに利益幅が小さい。小さなパイに地元企業が群がっている構図ができ、もう沖縄の建設業界に未来はありませんね」民問工事も請け負うが、確実に利益があがっておいしいのはやはり沖縄振興開発事業による公共工事だそうだ。そのパイも本土企業にとられ、さらに小さくなっている。その沖縄振興開発予算も、今は二二〇〇億円と最盛期(四四〇〇億円)の半分だ。生き延びるためにも補助金は平等に分け合いたいと考えたのかどうか、〇五年六月、公正取引委員会によって大手建設会社の談合が摘発された。そして、特Aランク業者一三六社とAランク業者五五社の合計一九一社が、総額一〇九億円余の賠償金を請求された。

とまあ、ここまではよくある話だが、仰天するのはこの後である。沖縄県は、損害賠償請求権を放棄して、業者の賠償金を免除することを検討したのだ。賠償金の六割は国庫補助分だから、請求権を放棄すれば、県が業者に代わってその分を国に支払うことになる。実質的に、賠償金を県が肩代わりするという、とんでもない計画が立案された。今のところ、地元の新聞に書かれたせいで、とりあえず見送りになったが、この一事から、沖縄県と建設業者は骨がらみになっていることがよくわかる。もはや、運命共同体なのだ。米軍基地がなくなってもいいように、今から「脱基地経済」の準備をしておくべきだと書いたが、沖縄県だって考えてはいる。ところが、私には勘違いしているとしか思えない。

たとえば「島田懇談会事業」の予算で宜野座村にできた「かんなタラソ沖縄」。〇三年にオープンした海洋療法施設である。総工費二四億円の高級リゾートホテルを思わせる豪華な建物だ。また、オーケストラ用の音響設備などを誇る旧勝連町の「きむたかホール」。これも島田懇談会事業から二〇億円を出させてできた。先にも述べた国頭につくられた総事業費三七億円の「くにがみ球場」などのスポーツ施設もそうだ。いずれも米軍基地がなくなっても自立していけるようにとのシナリオのもとにできたと聞く。ところが、いずれも赤字の垂れ流し。バンガローやオートキャンプ場などを備えた東村の「つつじエコパーク」のように黒字になっているところもあるが、ごく少数だ。