2014年4月17日木曜日

学生相談でどこまでできるか

甲南大学の助教授で、学生相談室のカウンセラーをされている高石恭子さんは、最近の学生相談そのもののあり方に疑問を呈しておられます。

「十一年前、私がある大学で学生相談にはじめてたずさわった当時、上司の先生からまず言われたのは、『学生相談は卒業をもって終わるもの。そのことを肝に銘じておくように』ということでした。河合先生の研究室で個人心理療法を学び、先輩たちの姿勢からも『出会ったクライエントとは一生寄り添うぐらいの覚悟で臨む』ことを当然のように受けとめてきた私には、上司の言葉はとても冷たく映ったものです。

たしかに、戦後アメリカから導入され、厚生補導の一環として発展してきたわが国の学生相談は、ユングやフロイト流の心理療法と違い、いまもアメリカの影響を強く受けているように思います。

活動の中心は、修学や進路のガイダンス、自己主張や対人関係のスキルの訓練など『短期的教育指導』で、長期的な心のケアが必要な学生は、どんどん外部の治療機関ヘリファー(紹介)していくという考え方です。

ただ、これは巷にセラピーを受けられる機関や個人クリニックがごまんとあるアメリカ都市部だから可能な話であって、日本人はそんなにドライに専門家が分業できる状況にはありません。最近問題になっている、神経症でも精神病でもない『人格障害』の学生を適切に引き受けてくれるリファー先は、さらに見つけることが困難です。

実際、現在の職場で年数を重ねてみて(これは私の会い方の要因も大きいかもしれませんが)、卒業と同時に学生相談室も卒業できる学生ばかりではないことと、その人たちへの継続的ケアの問題に直面しています。

学籍のない人へのボランティア的な対応には限界があります。また、就職超氷河期の現在、卒業後も研究生や科目等履修生といった身分で大学に残りつづけたり、就職してもやめて戻ってくる人がいます。今後は社会人編入などで、大学と社会を数年で還流する成人学生も徐々に増えてくるでしょう。