2015年3月17日火曜日

金融危機の波及効果で失業率はどこまで上がるか

第二の特徴は高失業率社会である。バブル経済崩壊後、失業率は5%を超えたが、2009年以降はそれ以上の失業率になる可能性が高い。金融危機の傷口具合によるが、失業率は5%を超えて7~8%前後までいく可能性も否定できない。その理由は大きく二つある。一つは産業構造の転換が進んでいないことである。日本はサービス業中心に徐々に産業構造を転換してきたが、依然として製造業が雇用を含めて成長のエンジンになっている。

しかし、その製造業はトヨタを見てもわかるように、先の見えない混沌とした状況にある。米国への輸出で収益を上げてきた会社が多いため、その復活は米国経済の傷口の深さ次第である。米国経済が泥沼化すると、日本の製造業はいつまでも復活できないことになりかねない。もう一つは、非正社員の失業者が急増するということだ。2008年後半から派遣切りが目立つが、その動きは2009年に入っても衰えることはないだろう。先程述べたように、2008年12月の完全失業率(季節調整値)は4・4%で前月比O・5ポイント悪化したが、問題は「今までに例のない急速な悪化」ということだ。

2002年以降の実感のないタラタラとした景気拡大によって企業業績は潤い、失業率は改善したが、失業率改善の要因は派遣労働者などの非正社員が増えたことだった。正社員が増えて失業率が改善したわけではない。そのため、派遣切りが起きれば失業率が再び悪化するのは当然である。もちろん、今後景気が回復すれば非正社員も再び増えるだろうが、派遣労働の規制は強化されるだろうし、「派遣切り」と批判されたこともあって、大企業は非正社員を雇うことにためらいを感じる可能性も高い。

現実的な言い方をすると、「派遣労働者はいつでも解雇できる」という制度になっているからこそ、大企業は派遣社員制度を利用してきた。それを批判されるとなると、企業としては「それじゃ、もう派遣は使わない。海外に工場を移転する方がマシだ」ということになるからだ。1980年くらいから「内需転換」「産業構造の転換」の必要性は指摘され、90年代後半以降は非正社員の増加に対応した「抜本的な雇用政策」と言われてきたが、結局は明確に政策転換しないまま、そういったものを誤魔化してきた。そのツケを支払わされるのが2009年以降であり、その結果、慢性的な高失業率社会になる可能性があるのだ。

第三の特徴は、失業率が上昇するにもかかわらず、人手不足が激しくなるということである。バブル経済崩壊後の長期不況のイメージや今回の金融危機の影響もあって、失業率は高止まりで人手が余っているような印象がある。しかし、実のところ人手は慢性的に不足している。当たり前のことだ。少子高齢化で人口が減少している以上、人手不足は当然の帰結である。しかも、「日本は人手不足になる」ということは平成以降ずっと指摘されてきたことだ。政府や厚生労働省は公に「人手不足だ」と言い続けている。