2015年6月16日火曜日

合理化から厚生費の削減

日産労組は、自動車総連の中心組合として、賃上げを九・六パーセント(一万五三〇円)に抑えた。その剰余価値は設備投資に振りむけられる。今期決算では、売り上げ一兆七〇〇〇億円、利益九九〇億円。今年度の投資総額は、当初予定の六九〇億円をさらにこ一〇億~一三〇億円程度上積みする。自動化が進められる。職場は次第に無人化される。七三年秋の石油ショック以降、応援、出向のたらい回しが続出した。応援先から帰ってみると、かつての職場がなくなったり、応援先からまた応援にだされるハシゴになった。嫌気をさしてやめるものも出た。

「嫌ならやめろ」職制は露骨だった。三月中旬に発表された産業構造審議会機械産業部会の報告「転換期の自動車産業」によれば、こんご自動車の普及率が頭打ちになるにともない、一〇年後には、一一万八〇〇〇人あまりが、「余剰労働力」となり、関連産業分までをふくめると、その数は三二万人にも達するとのことである。すでにそれに備えての人員削減が進行中であり、シェア争いと合理化による超過利潤は設備投資に振りむけられ、追浜工場でも、圧造、溶接部門のロボット化と、切り捨て自由の季節工への依存度が高まりつつある。

トップメーカーのトヨタは、トヨタ式合理化方式によって、そのトップの座を確保しているが、「トヨタを追い抜く」のが至上命令の日産では、当然のことながら、トヨタに追いつく大合理化政策に拍車がかけられている。昭和五四年までにトヨタを抜く、その悲願がいま推し進められている。「54P(Pは生産性の略)計画」である。こんご予想される低成長のなかで、いまのような超過利潤を確保するには、労働者を削減して、生産性を向上させるしかない、と資本家たちは考える。現在人員のままで、三〇パーセントの生産性向上、これが54P計画の骨子である。

すでに各工場には、原価低減部会、工数低減部会などが設置され、作業方法のさらなる強化が実行されている。それは共有部品をふやすとか、ひとりあたりの持場を拡げるなどのしめっけから、すでに一五年ほどつづけられてきた、労働者に「まずくて飲めるシロモノではない」と悪評を受けている、脱脂粉乳による牛乳の無料支給でさえ中止するまでに至っている。

これら部品の合理化から厚生費の削減などによって、この二年間に「少なく見積もっても一〇○億円以上節約できた」(横山能久取締役「日本経済新聞」四月二二日)とのことである。合理化とかコストダウンとかいえば、きこえはいいが、その本質は「やらずぶったくり」である。いま九州で建設されているダットサントラックの生産ラインは、座間工場の同設備にくらべて五〇パーセントの生産性向上が図られている。「生産性向上で賃金・労働条件の向上」。この同盟型スローガンがいかにギマンであるか、すでに、というよりは遅すぎたきらいがあるにしても、明らかになったのである。そればかりか、今年になって二名の死者までだすようになった。