2015年7月17日金曜日

企業経営の成果を示す重要指標

これから本邦金融機関が健全な金融仲介機能を取り戻すためには、大規模な業務の再構築、合併や統合、提携は不可避であろう。グローバルに加速する金融再編の流れをさえぎるような保護的規制はもはやない。強力な外資は続々と本邦市場へ参入してきた。そうした外資に本邦の金融機関は、どのような戦略で対応しようとしているのだろうか。

金融再編のプロセスは、他のどの産業分野の国際的再編にもまして異文化の衝突を孕んで進行することが多いという点を考えてみたい。端的に言って、日本的経営文化と米国式経営文化の衝突である。冒頭に紹介した個人的な経験の一端は、株主から委ねられた資本の効率的運用のために、収益率の低い業務は容赦なくつぶし、不要な人員は抱えない米系金融機関の企業文化を象徴するささやかなエピソードでもある。

このような現象は、これから日本でも日常化してゆくだろう。結果の平等に偏ってきた日本的経営文化が、企業の活性化に貢献する社員へのインセンティブを、よい方向にも、そしておそらくは好ましくない方向にも、強化すべく修正されることは避けがたいようである。

また、米国などでもっとも一般的な企業経営の成果を示す指標としてROE(株主資本利益率)があるが、これは自己資本利益率ともいい、税引き利益を自己資本で除した数値で、株主の持ち分に対する収益力をあらわす。日本においても、これからの老齢化社会では、否応なく利子や配当など資産所得に依存する部分が大きくなる。

企業の発行する株式や債券など、資産の投資利回りが低ければ立ちゆかない社会である。その意味からもROEや資本コストを意識した米国式経営文化が強まるのは避けがたい。こうした要因も、日本的経営文化を、根底からゆさぶり、給与体系や雇用制度を変えてゆくだろうが、それがひきおこす社会的混乱を緩和するセーフティーネットは十分だろうか。