2015年8月21日金曜日

最新技術の恩恵を享受する

この扱いは、パソコン利用の実態と著しく乖離している。パソコンとその周辺機器の技術進歩は非常に急速なため、一年もすれば状況は一変してしまう。最新技術の恩恵を享受するには、毎年買い替えてゆく必要がある。作業能率があがることを考えれば、それでも無駄な投資とはいえない。かなり我慢して使うとしても、せいぜい二年間が限度であろう。パソコンとその周辺機器は、いまや事実上消耗品となっているのである。

パソコンの減価償却期間が六年間とされているのは、物理的な耐用年数を考慮してのことであろう。確かに、パソコンのハードウェアそのものは、六年間はもつ(多分もっともっだろう)。しかし、本来考慮すべきものは、経済的あるいは技術的な耐用年数である。新しいものが性能が良いというだけではない。古いマシンでは、最新のソフトウェアを用いることができない。インターネットへの接続も難しい。また、他人が作ったデータなどを利用したり、自分が作ったデータを他人に送るにも困難がともなう。

パソコン関連の技術は、「ドックイヤー」で進歩する。この基準で考えると、日本の税制は、パソコンについて四二年間の償却を強制していることになる。あるいは、逆に考えれば、通常の機器で六年償却が適切なら、パソコンはその七分の一つまり全額を初年度で償却してよいことになる。これは「パソコンか消耗品だ」という感覚と一致する。

通常、税制で「特別措置」といわれるのは、何らかの政策目的のために、本来あるべき税負担を軽減する措置をさす。たとえば、特別償却といわれる措置は、本来の耐用年数よりも減価償却期間を短縮する措置である。しかし、パソコンの場合には、実態に比べて減価償却期間が長くなっているため、税負担が本来あるべき水準より過大になっているのである。

実は、このような税制上のバイアスは、パソコンとその周辺機器に関して存在するだげではない。ソフトウェアの開発に関しても同様の問題がある。どれらに要した費用は、繰り延べ資産として一定期間にわたって償却することを求められる。しかし、これらの経済的寿命は、パソコンのハードウェアよりも短い場合が多いのである。