2016年3月16日水曜日

エネルギー価額が高騰がもたらしたもの

当時の日本経済研究センターの長期予測が、七五年二月十三日付けの日本経済新聞に掲載されていたが、それには次のように書かれていた。「日本の貿易収支は一九七四年の六月には受け取り超過となり、八月以降は経常収支も黒字となった。石油価額の上昇による外貨負担はたしかに大きいが、日本の経済が発展し、輸出力を高めていくならば、国際収支の前途を悲観するには当たらないだろう」 歴史はその見通しのとおりに動いたのであった。

エネルギー価額が高騰したのであれば、工業製品の製造コストに占めるエネルギーの使用量も、製品そのものの子不ルギー消費量も、大幅に切り下げなければならない。日本の企業は全力をあげて、その省エネルギーに取り組んだ。それらの子不ルギー原単位は劇的に低下しはしめた。

製造工程での省エネルギーは、もともと生産管理の一つの重要な課題である。先に書いたように、日本の企業は一九五〇年代の後半以来、生産管理の重要さを認識し、徹底させて、日本の工業製品の信頼性を格段に高め、国際競争力を向上させてきた。省エネルギーのための努力とは、その方向をさらに推し進めることにほかならなかった。
 
また先にも書いたように、公害防止の第一歩も生産管理の改善であった。日本の企業は、公害を引き起こした加害者として、世論から非難されたが、一九七〇年代に入って、さらに生産管理の改善を進め、廃棄物処理の技術開発のために資金と人材とを投入し、公害防止の努力をかさねた。その公害防止と省子不ルギーとがみごとに一致して成功した事例が、日本の乗用車の排ガス浄化技術であった。乗用車の排ガスが大規模な公害をもたらすというケースは、アメリカのロサンゼルスにおいて特にしばしば見られた。排ガスが一因となってスモッグが発生し、多くの市民が呼吸器障害に苦しんだ。