2012年4月5日木曜日

どうして格付け会社は間違いを犯したのか。

一昨年にサブプライム問題が起こり、これが昨年9月のリーマン・ショックをきっかけに世界的な「金融危機」と言われる状況につながった。

この事態をもたらした原因をあえて犯人と呼ぶと、その候補は複数あるが、本来はリスクの大きな金融商品(たとえばサブプライム・ローンの証券化商品)に「AAA(トリプルエー)」をはじめとする高格付けを与えた格付け会社が少なくとも共犯者であることについて、金融業界に詳しい人なら、誰も反対しないだろう。

それでは、どうして格付け会社は、このような間違いを犯したのか。手っ取り早く答えを言うと、それは、格付け会社は格付けされる証券を発行する発行体から格付けの報酬をもらっていたからだ。

たとえば、不動産の証券化商品を正しく分析することは難しかったかもしれないが、米国全体で不動産価格が過剰に上昇する可能性や、現に証券の担保となっている不動産の価格が高すぎる可能性について、格付け会社のアナリストが何も気付かなかったとは考えにくい。仮に、本当にそういうことならば、そもそも彼らに債券の格付けなど無理だ。

証券化商品の発行者(主に投資銀行と呼ばれた証券会社)から格付けの手数料をもらいつつ、この商品のセールスに大いに加担した。

格付け会社それ自体は、ビジネスを続けていく上で「評判」が大切な財産だ。安易な格付けを乱発して評判を損なうことは避けたい。

しかし、一つには不確実な長期的利益に比べて短期的利益の魅力があまりに大きければ、もう一つには会社の利益が長期的評判にあっても、その案件に関わる当事者個人の利益が当面の業績とこれに連動する収入にあるとしたら、セールスを優先して甘い格付けが乱発される可能性がある。これは、難しいことを考えなくても、格付け会社の担当者や経営者の立場に身を置いたと想像すると、実感として分かることだろう。