2012年4月19日木曜日

銅とインジウムから太陽電池を作る

太陽光発電のコストは30年前1ワットあたり100ドルだったが現在は4ドル。初期費が大きいのでコスト削減には装置費削減が必要である。また設置費用は面積に応じて増減するため同じ発電能力なら設置面積が小さいほうが安く、従って発電効率の向上も求められる。

太陽電池の主な材料はシリコン。もちろんこれは主要な半導体材料で、半導体産業が盛んだったカリフォルニア州の一部地域がシリコンバレーと呼ばれるようになったことは常識である。今は生産拠点の多くが海外に移っているが、関連技術の蓄積は他の追随を許さない。太陽電池の生産技術は半導体製造のそれに似ており、関連技術の開発が活発になるのは当然である。

アプライドマテリアルズ社は太陽電池とトランジスタの両方の製造に使える装置を開発。製造ライン変更が容易で太陽電池製造に柔軟に対応できるとしている。半導体製造大手のサイプレス・セミコンダクタ社は太陽電池メーカーであるサンパワーに出資し、今後太陽電池生産に力を入れる方針。グーグルによる太陽光発電施設導入など大規模な導入事例も登場し、市場拡大が期待できる。

主要な材料であるシリコンの原料不足によるコスト高が懸念されているが、別な原料の開発も進んでいる。シリコンバレーのベンチャー企業であるナノソーラー社は、銅とインジウムから太陽電池を作る新技術を開発しており、ベンチャーキャピタルから多額の出資を受けている。一部で過大な期待による過剰投資との批判もあるが、世界の太陽電池市場のほぼ半分を占める日本勢を将来脅かすことになるのではないかと注目される。

2012年4月12日木曜日

格付け会社が信頼できないという問題

格付け会社が信頼できないという問題は、根本的にはまだ解決していない。債券の格付けは信頼できるかと聞かれたら、筆者は「ノー」と答える。格付け会社と同様の問題は、個人を巡るお金の世界にもある。

金融機関のセールスマン、あるいはファイナンシャル・プランナー(FP)は、良くない商品や運用計画を推奨すると評判が損なわれて損をするはずだが、商品販売の手数料が入ったり、商品の供給者とのビジネス関係を通じて報酬を得たりする場合に、ダメな商品でも顧客に勧めようとする動機を持つことがある。

独立系に見えるFPの場合も、証券会社と証券仲介業の契約を結んで手数料が入るようになっていたり(通常は半分程度)、金融機関の宣伝への協力やセミナー講師で収入を得ていたりする場合がある。

こうした人の場合、「こんな人の場合は、こんな商品に投資してみる手もある(だろう)」というような曖昧な言い方で、明らかに投資家に不向きな商品を勧めることがある。雑誌や新聞などを見ていると、金融商品の広告や広報にFPが登場するケースの少なからぬ場合がこれだ。

もっとも、FPは、そもそも厳密にどの商品がいいのかについて、比較する基準を正確に知らない場合が多い。格付け会社、セールスマン、FP。いずれと付き合う場合も、こちら側が知識と判断力を持つことと同時に、相手のビジネス上の利害関係に注意を払うことが必要だ。

2012年4月7日土曜日

ITバブル前後の業界の栄枯盛衰

政策の変化もあってエネルギー関連産業への期待は大きく、太陽電池の技術開発と言えばベンチャーキャピタルが出資してくれるのだとか。

ちょうどITバブル期にドットコムと言えば出資してくれた状況に似て、やはりバブル的な様相を呈しているようだが、考えを変えればそのバブル期を乗り切った後にITが本格的に普及したのと同じ道を歩む可能性もある。

かつては巨大な軍事予算が集中的に投じられて高度な技術開発が進み、新しい産業が立ち上がってきた。

冷戦の終りとともにそうした予算が削減され、軍事費による技術開発と、その民生転用による新しい産業創出といった流れは最近弱くなっているように感じられる。更に軍事費のほうは、良し悪しは別にして今は直接的な戦費のほうが重要なことだろう。

こうした状況を踏まえてITバブル前後の業界の栄枯盛衰を見ていると、多くの投資が特定の分野に集中することで新しいビジネスが一気に立ち上がり、多少痛みを伴いつつそれが落ち着く頃になると本格的普及期を迎える、といった流れが見えてくるようである。

現在、立ち上がってくるために必要な短期間の集中的資源投入の役割は、バブル的熱狂に陥る市場がその一翼を担っているのかもしれない。

2012年4月5日木曜日

どうして格付け会社は間違いを犯したのか。

一昨年にサブプライム問題が起こり、これが昨年9月のリーマン・ショックをきっかけに世界的な「金融危機」と言われる状況につながった。

この事態をもたらした原因をあえて犯人と呼ぶと、その候補は複数あるが、本来はリスクの大きな金融商品(たとえばサブプライム・ローンの証券化商品)に「AAA(トリプルエー)」をはじめとする高格付けを与えた格付け会社が少なくとも共犯者であることについて、金融業界に詳しい人なら、誰も反対しないだろう。

それでは、どうして格付け会社は、このような間違いを犯したのか。手っ取り早く答えを言うと、それは、格付け会社は格付けされる証券を発行する発行体から格付けの報酬をもらっていたからだ。

たとえば、不動産の証券化商品を正しく分析することは難しかったかもしれないが、米国全体で不動産価格が過剰に上昇する可能性や、現に証券の担保となっている不動産の価格が高すぎる可能性について、格付け会社のアナリストが何も気付かなかったとは考えにくい。仮に、本当にそういうことならば、そもそも彼らに債券の格付けなど無理だ。

証券化商品の発行者(主に投資銀行と呼ばれた証券会社)から格付けの手数料をもらいつつ、この商品のセールスに大いに加担した。

格付け会社それ自体は、ビジネスを続けていく上で「評判」が大切な財産だ。安易な格付けを乱発して評判を損なうことは避けたい。

しかし、一つには不確実な長期的利益に比べて短期的利益の魅力があまりに大きければ、もう一つには会社の利益が長期的評判にあっても、その案件に関わる当事者個人の利益が当面の業績とこれに連動する収入にあるとしたら、セールスを優先して甘い格付けが乱発される可能性がある。これは、難しいことを考えなくても、格付け会社の担当者や経営者の立場に身を置いたと想像すると、実感として分かることだろう。